卵でした
「ドン、ドン、ドン」
荒々しく勝手口のドアをたたく音が響く。
何事かと小走りで向かい、ドアを開ける。
近所のおじさんだった。
「ちょっ、ちょっと来てくれ」
おじさんの目は真剣だ。
これは事件かもしれない。
スイカを盗んだヤツを見つけたとか、
許可なくアライグマを殺したとか
そういったたぐいの事件なら考えられる。
急いでおじさんの軽トラックに同乗させてもらう。
車中。
「いやあね、卵がね」
「卵?ですか?」
「そう卵。カモの卵が、田んぼのあぜにあったもんでね」
「はあ、卵ですか」
「そう卵。専業農家のわしらでも年に1度見られるかどうか。珍しいんやで」
そうこうしているうちに現場に到着。
ゆっくりとあぜを進む。卵を踏まないように。
「これや」
「うわああああ、すげええ。卵や」
「きれいな卵やろ」
「カモの卵も真っ白なんですね」

5センチほどの卵は11個。
田んぼは人間だけのものではないと、教えられたようでした。【英】